「対人能力は陳腐化しないでしょ?」という梅田さんの言葉からはじまった今回の”これからの10年飲み会” 盛り上がりまくった今回は会費数百ドル払ってでも出る価値ありまくりの貴重なお話を聞けた涙ものの会合となりました。(会費はないです。。。念のため(^_-))
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議題
梅田さんにいろいろ聞いてみよう。
開催日時・場所
6/17/05 金曜 7:00PM~1:00AM 今野宅にて
出席者 (到着順・敬称略)
梅田望夫
寺尾 威生
3週間前に日本からきたばかりのシリコンバレーで修行を始めた将来有望な若手
ルベン・バルブエナ
沖電気 半導体部門 Product Marketing Manager (日本語ペラペラのパラグアイ人)
啓子・バルブエナ
ルベン氏の奥様 量子情報理論のMaster Degreeを持つ主婦
平松 直樹
Cisco Systems社から社員4人のスタートアップ(zyme社)へ最近転職
川井 マリー
Tafapolsky & Smith LLP パラリーガル
赤木 勝俊
NECエレクトロニクス シニア・エンジニアリング・マネージャ (チップ設計)
坂口 法子
主婦。3人の子供をもちながら絵画・料理などプロ級のプチカリスマ主婦。
鈴木 久美
主婦。日本とアメリカを行き来する生活を始めて丸5年とちょっと。
髙橋 俊輔
船井電機 事業戦略本部シリコンバレー事務所駐在
佐藤 利元
山洋電気 サーボディビジョン エンジニア
今野 祐子
主婦。2歳の娘とGoing my wayな旦那と格闘の日々。
今野 純
計 大人13名 (+子供一名 +赤子2名)
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対人能力
いままで10年後の世界を考える際、常に”何がどのように変化するのか”ということばかり考えてきた。しかし今回梅田さんのメッセージは
対人能力の重要性は今までも・これからも普遍であるが、これからは相対的に他の能力の価値が下がる為、結果、対人能力は最重要となる。というものであった。
言わば10年経っても変わらずに重要なものから紐解くという我々には全く無かった新たな発想だ。しかもその内容はなかなか刺激的だ。
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実は翌朝6:30に下記内容のメールを梅田さんから頂いた。(帰宅が0AMごろだったはずなのに。。。)
一両日中に、僕のダイアリーで感想文を書きます。
たぶん昨日話した内容のエッセンスは、議事録というような形でだと表現しにくく、背景もきちんと説明した上で文章にしないと、多くの人にわかってもらえない、ということになりそうなので。
貴兄サイトでの報告は、僕のダイアリーでの感想文を受けた形で書いていただければと思います。
梅田
そしてその4時間後には
このエントリーを。。。オソロシヤ。。。ありがとうございます!!フンダンに使わせてもらいます。
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コンテンツとはデジタル化可能な情報すべてを意味する
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/web_kikaku/u105.html
でも詳述したように、コンテンツ世界の需給バランスがこれから崩れる。コンテンツとはデジタル化可能な情報すべてを意味する。
と梅田さんは述べているが、ここを正しく理解するのは結構難しいし、つらい部分だと思う。 ”デジタル可能な情報すべて”
とはまさに”すべて”であり、あらゆる知識や意見というものを含んだ”すべて”である。しつこいようだが、この”すべて”加減には
遠慮が無い。ここが理解しずらいポイントだ。
そしてそのコンテンツの価値が下落していくわけだから、単純に知識がたくさんある”だけ”の人や、すばらしいアイデアをだせる”だけ”の人自身の価値も当然下落する。端的に言えばそれだけでは飯を食っていけなくなるという事だ。
そのような時代でもモノを作り上げる基本プロセスは変化しない。
①アイデアが産まれる
↓
②金(リソース)を集める
↓
③モノをつくる
↓
④売る
ここでCheap RevolutionやPeer Productionの概念から考えると①と③のプロセスにおけるコストは時間が経つにつれて急速に下がる。すなわちその分野”だけ”にリソースを提供している人の価値も同様に下がる。
しかし②や④のプロセスにはそれが波及しない。。。なぜか、それはつまるところ人と人とが直接コミュニケートし、泥臭いことをしながら話を進めるしかない分野だからだ
特に④に関してはかなり反論を受けそうなので補足する。
すでに多くの分野でネットの影響を受けたリストラは営業部門が中心であり、『モノを売る仕組み④こそ最もコストが下がるのではないか?』と考える人は恐らくまともである。。。しかし事の本質はそこにはない、モノを売って金に変えてくる能力がこの論議における本質であり、それはデジタル化できるようなものでは決して無い。
もっと言えば、「たいした製品でもないのに、売り切ってしまう力技」 「販売の仕組みを変化させる事により事業として成り立たなかったものを利益を生みだすように変える創造性」 「顧客心理を徹底的に知り尽くしてしまう洞察力」 といった、その場その場で多岐に渡る総合的な”営業力”についてを語っており、優秀な営業マンを捕まえて”奴はセンスがいい”という
あいまいな表現でかたづけられてしまう能力を指し示している。
梅田氏はその能力を総称して”対人能力”と表現されている。
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これからなすべきこと
梅田氏の”少し大雑把な比喩”はまさに絶妙な比喩だ。ただしこれを一度読んだだけで彼の意図した内容がピンと来る人は
かなり”センス”がいい。
ここであげられている”勉強好きな少年”とは別に特別な職業についた人を指し示しているわけではない。学者や教授、新聞記者や物書き、コンサルタントやアドバイサー、下手をしたらお医者さんなんかも含まれるだろう。知識だけをアウトプットするような職業についている人は全員それに当てはまる。組織に属して、さらには名刺の肩書きで飯を食っているような人はさらにその傾向は強くなるだろう。
そしてもしあなたがエンジニアで危機感なしにこの文章を読んでおり、「私は技術力だけ磨いていれば十分さ」と思っているのであればかなり危険だ。そう、そんなあなたも”勉強好きな少年”のりっぱな仲間のひとりなのだ。では何をしたらいいのだろうか?
まずは意識を常に持ち続けるということだろう。今の生活を変える必要はまったくない。しかし”対人能力を磨く”という意識を持ちながら生活しているのとそうでないのでは、10年後大きな差となって現れてくるのは間違いない。
それだけじゃよくわからん!不安だ!と思う人は一度営業をしてみたらいい。なんでもいい、とりあえず売ってくるのだ。みかんでも大根でもいい。
ちなみに私は家内と冗談で言うのが「レイオフされたら包丁かなにかを街頭販売して生き抜いてやる」そして家内は「それも楽しいかも」とあっけらかんと応える。そんな自信が私たちにはある。
ネットワーク化が進めば進むほど、ネットワークを越えた行動が問われてくる。所詮は人間と人間が交錯する為の便利ツールでしかないわけなのだから。ネットワークに繋がっている事は目的でもなんでもないのだ。
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今回梅田さんには身に余るお褒めのお言葉を頂いて恐縮しきりだ。私にすぐれた”対人能力”があるかは甚だ疑問ではあるが
梅田さんに指摘された私の行動力についてのくだりは、もしかしたら何かのヒントになるかもしれないのでご紹介したい。
ここのエントリーでご紹介したように私はBlogを通じてある人物に会いに行った。これを評して、
1000人がネットを介して新たな出会いがあると気がつく
そのなかでやろうと思うのが100人
成功するのが1人
数字は適当だが世の中そんなもんだ
。。。とのこと、そして続きがある。
シリコンバレーだと、結構大物でも一度は門を開けてくれることは多いが、さらにもう一度会えるようになるのは非常に難しい。
一度会えてまた会いたいと思わせる事ができる人はさらに(1/1000よりも)ぐっと少ないであろう。
ちなみに、私自身も驚くこの行動力は最近備わったものだ。それには2つのきっかけがある。
1つめはBlog。これのおかげで世界中のどんな偉い人でも会おうと思えばいつでも会えるという錯覚に陥ることができた。
2つめは梅田望夫氏の存在。あとで機会があればどうやって私が彼と知り合うことができたのかをお伝えしたいが、簡単にいうと、いきなり門を叩きに行った。そしたら予想以上に暖かく迎え入れて頂いた。私にとって梅田望夫は雲の上の存在であったのだ、その時の感激は今でも忘れない。
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質疑応答まとめ
Q.高速道路の渋滞を抜けるにはどうしたらいいのか?
A.はじめから高速道路に乗らずに、遠回りでもいいから自分でやり遂げる力を養いながら進むこと。
Q.シリコンバレーはこれからどうなるか?
A.アメリカという人工国家で人種のるつぼである状況に、恵まれた気候・Frontier Spirit・Golden Rush的情熱・政治思想といった要因を踏まえたうえで、これからも新しいテクノロジーを発信し続けると思う。しかし他の地域の発展による相対的な意味でのシリコンバレーの特異性は薄れてくるだろう。
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Peer Production
ここのエントリーであったように、どれだけの人がPeer Productionに対して最初に感じたのか聞いてみた。(梅田さん以外が対象:対象者7名)
1.まったくそのとおりだと思った: 1名
2.好むと好まずに関わらず(何か良いアイデアが浮かんでも)誰かが同じようなアイデアをOpenにしてしまう世の中になってしまうので、結果その通りになってしまうであろうと思った: 6名
3.そんなことはおき得ないと思った; 0名
注:実はアンケートをとる前に何人かの意見が交わされて、2.の意見についてかなり全体が流されていた感が否めない。したがって上記の結果は読んだ直後によるものというよりも、梅田さんの話を一通り伺った上でかつ意見を交わした結果によるものと捕らえる方が正しいと思います。
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最後に
ある人と名刺交換をしている時に梅田さんが「この住所ってどのあたりですか?」と切り出した。「そのあたりは高級住宅街でオフィスとかあまり無いはずだから、これは社長の自宅をオフィスにしているのではないですか?」とつづける。
ここには一流営業マンのエッセンスが凝縮されている。
1.相手の名刺をきちんと細部まで見ることによる相手への配慮・礼儀・探究心
2.細かい情報から話を広げる話術
3.自らの洞察力と能力を”嫌味なく”相手に知らしめる才知と振る舞い
私は元々商社の人間なので、”できる”営業マンを数多く見てきたし、彼等としのぎを削ってきた。従ってこういったちょっとした
しぐさや行動に異常に敏感になってしまう。梅田氏のそれは、うちの家内に対する配慮の仕方の自然さ等どれをとっても超一流だった。無論、人間性から自然と染み出てくる部分も大いにあるのではあるが。。。
間違いない。梅田氏は営業マンでも探偵でもどちらの職業になっても超一流になっていただろう。
最後に Part2
Cheap Revolutionの捕らえ方を間違っていることに気づいた。
『なんでもかんでも安くなる ⇒ 安くなったモノを使って何しょう?』
これは負け組みの発想
『コレで儲ける、そしてそれを作る為のツールが勝手に安くなる ⇒ 時間が経てばより儲かる』
こっちですな。必要なのは。
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(実は今回のエントリーは、どのレベルまで公にしてしまって良いのか確認を念のために取る為、予め梅田さんに目を通して頂きました。そこで唯一の変更点を下記に挙げます。。。ほんとは誤字脱字もいっぱい指摘されちゃった。。。(-_-;))
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『なんでもかんでも安くなる ⇒ それを作っている俺はどうしよう?』
これが本当の負け組の発想
『なんでもかんでも安くなる ⇒ 安くなったモノを使って何しょう? 楽しそうだな』
これが普通の生活者の発想。
『コレで儲ける、そしてそれを作る為のツールが勝手に安くなる ⇒ 時間が経てばより儲かる』
これが起業家の発想